説明不足?「自己資金100万円台ではじめる不動産投資」

営業本です。(株)UK Corporation というトランクルーム投資を手がける会社の代表の方が、自社サービスの営業を目的に書いた本だと思われ、勧奨される金融商品はトランクルームの場所代に当たる金額をおそらく一括でUK corporationに支払い、その後毎月トランクルーム利用者の支払う賃料から管理費広告宣伝費等を除いた金額が投資者へ支払われるというものです。不動産所有権は投資者にもUK corporationにもなく、オーナーからUK corporationが借り上げ、投資者はUK corporationと転貸契約を結ぶという、資産性はなくUK corporation頼みな金融商品となっています。

本書はインスタに広告が表示され、アンケートに回答することで無料で貰えました。

本書の流れ

ざっくり流れは以下のとおり

日本の将来くらいよね国にも会社にも頼れません→いろんな投資があるけどデメリットが多いよ→トランクルーム市場は拡大してて未来が明るいよ→トランクルーム投資のメリットと回避できるデメリット→弊社のノウハウで成功率高められるよ→向いているのはこんな人→トランクルーム投資はただの金儲けじゃなくて社会的意義のある素晴らしいこと→悩み苦しんでいたがトランクルーム投資により改善し、さらにより明るい未来を獲得した経験談いくつか。

各章の内容は下記

第1章 日本の未来は暗い
経済停滞、少子化、老後2,000万円問題、格差拡大、年功序列終身雇用の崩壊

第2章 トランクルーム以外の投資商品はリスクの割に利回りが悪い
預貯金、個別株、投資信託、FX、仮想通貨、コインランドリー、太陽光、アパート・マンション投資

第3章 トランクルーム市場の明るい未来
世の中からのニーズ、市場拡大、こんな利用者がいますという具体例いくつか

第4章 トランクルーム投資のメリットデメリット
高利回り、定期収入、築年数関係ない、手間がない、維持が楽、災害に強い
ある程度の初期費用(弊社なら解決できます)、集客に時間がかかる(弊社なら解決できます)

第5章 トランクルーム投資の成功率を高めるポイント
区分投資、広告費をUK corporationが負担、管理業務をUK corporationが実施等々

第6章 トランクルーム投資が向いているのはこんな人
本業+αの収入が欲しい人、自立した女性、融資残枠がない投資家

第7章 トランクルーム投資は社会貢献

コラム
トランクルーム体験談

記載内容について

教材ではなく営業本ですからそれを求めるのはお門違いであること理解しつつも、トランクルーム投資以外の投資の説明の解像度が低いことが気になります。トランクルーム投資商品のメリットは定性・定量面ある程度フォローされていますがデメリット関する定量的情報もまた少ないです。

例えば以下のような説明不足?省略が少なからずあります。

日本の暗い未来を強調する文章

おそらく日本のが豊かな国とだと感じたことはないでしょう。さらに最近は人口減、少子高齢化といった要因で日本の税収は減る一方です。

どの税収を指しているか不明瞭です。一般会計税収を見るに減る一方とは言えないでしょう。2009年に同じことを言うならば違和感ないものの、本書の初版が出版された2021年は増加傾向の渦中にあります。

画像は財務省より

投資信託に関する記載

専門家に運用を依頼するということは、それなりの手数料がかかります。(中略)そもそも、その専門家は100%信頼できるのか、という問題もあります。(中略)最大のデメリットいえるのが、利回りの低さです。(中略)平均利回りは2〜3%程度です。

手数料が掛かるのはトランクルーム投資と同じ、信託先を信頼できるか、という問題は今回のトランクルーム投資商品提供元のUK corporationにも言えることですから、投資信託のデメリットとして挙げられるのか疑問です。
投資信託の専門家を信頼できるか?という問題はアクティブファンドを避け、稼ぐことを目的とするのではなく経済状況を把握することを目的とした経済指標に連動するインデックス投資を選ぶことである程度回避できると思えます。利回りについて言えば最もメジャーと言って反論は少ないであろうS&P500を1988~2022年の間に20年投資した場合、平均で8%、最高で11%・最低でも5.24%となります。これは判断材料として提供すべき情報でしょう。

ただ、UK corporationのトランクルーム投資個別説明会LPを見ると
S&P500ずっと伸びているけど、時折乱高下するからもっと資産分散しましょう。と言う違和感ない説明になっていました。

仮想通貨に関する記載

仮想通貨の思想に胸を躍らせた平民の一人として少し悲しい記載でした。

国が管理していないということは、セキュリティ面でも脆弱です。円と違って実体のないデータ上のものなので、インストールされているスマートフォンやパソコンがハッキングされてしまえば勝手に送金されたり消失してしまったりする可能性もあります。

仮想通貨自体のセキュリティが脆弱という印象を抱く文章ですが、正確には仮想通貨取引所を規制する法整備が進んでいないため取引所の運営が杜撰な可能性がある。でしょうか。多くの仮想通貨はブロックチェーンで運用され、これは構造的にセキュリティ的信頼性が高くメガバンク等々も開発に取り組んでいます。本書の記載は誤解を招きかけない表現です。実体の話も金本位制廃止後の現状の貨幣制度や銀行の信用創造機能を考えると、「円」にも実体があると言って良いのか疑問ですが、それは流石に屁理屈ですね。貨幣制度の本じゃないので。

この他にもアパート・マンション投資のデメリットとして各地の空室率を記載する一方トランクルームの稼働率は高いと記載しつつ具体的な空室率の記載はなかったりと「もうちょっと具体説明が欲しい!」と思うポイントがちょいちょいあります。

ただ、トランクルームにはそういうニーズがあるんだ!トランクルーム市場で伸びてるんだ!と言う基本的なことは勉強になるので、無料でもらえてこれが読めるのは得した感があります。のでぜひ

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