Z世代がW800 Cafe購入したからその魅力を書きまくる

W800を購入し納車されたギリギリZ世代の者です。W650とかW1は乗ったことも見たこともないですが、W800 Cafe 2022 modelに一目惚れして買ってしまいました。が、周りにそもそもバイクに乗っている知人もおらず欲求不満なので、その魅力を書きまくらせてください。

W800 Cafeの魅力

機能的デザインの空冷エンジン

ラジエーターがないので正面から視界に入るのはタイヤとエンジン。ラジエーターという板がエンジンの正面を覆っていなく、工業製品感溢れる美しいエンジンとフレームだけが露出しているその姿が美しい・・・
エンジンを形作る冷却フィンは、放熱という実利的目的を第一に置いた(であろう)デザインであり、必然性が形作った(であろう笑)その造形は、その文脈が魅力を引き立てます。機能が形づくるデザインってかっこいいですよね。ね?

水平基調のデザイン

地面と平行なラインが多様されるクルマ・バイクが好きです。最近でいうとVOLVO、ホンダ2世代目CIVIC、ロイヤルエンフィールドとか。W800 Cafeのキャブトンマフラーはシリンダーから伸びたエキゾーストパイプはすぐに最低地上高に到達し、そこからマフラーエンドまでが水平。タンク下からリアフェンダーにかけても水平基調を醸し出していますし、低い位置のハンドルはバイクの水平ラインから大きくはみ出ることがなく、その構成全体が美しいとしか言いようがありません。共感してください。

このバイクは見た目だけでなく、素人なりにその歴史にロマンを感じます。

ロマンの歴史(カフェレーサー)

カフェレーサーというバイクカテゴリが生まれたのは定説では1960年代イギリスだそう。

1960年代のイギリスでは第二次世界大戦後のベビーブーム世代が若者となり総人口の44%を占めます。完全雇用政策の下比較的比較的容易に職につき、50年代に始まる高度経済成長の恩恵を受け可処分所得を増やし、1960年の徴兵制廃止により可処分時間を得た若者は消費活動の主役となっていきます。

その購買力から消費の主役となった若者は流行の先端を行く存在となり、これまでの少数の社会上位ヒエラルキー層から労働者階級などの下階層へ広がっていた流行が、ヒエラルキーの低い労働階級、しかもその若者から上へ流行が広がるという空前の変化が起きます。

この変化はクラシック音楽などのハイカルチャーが、ポピュラーカルチャーより価値が高いという文化の価値観を大きく揺さぶることになります。

※下から上へ広がると言っても、当時「イギリスには社会階級がある」と認識を持つ人々が90%以上で、上級階級者が労働者階級の流行を追いかけていたと考えることは不適切であるものの、労働者階級層の社会に対する影響力が増大したと考えることには違和感はないでしょう。

※豊かなイギリス時代でありその恩恵は富裕層だけではなく多数派である労働者階級にも届き、インフレを上回る速度で賃金が増え耐久消費財は急速に普及したことも事実である一方、1960年の相対的貧困率は1953~4年の1.8倍であり、国としての経済成長率も西ドイツや東洋の奇跡と呼ばれる急成長を続ける日本と比べると遅緩であり相対的衰退とも言えることも事実です。

そのような環境下で大人や権威に従わない意志を可視化したのが、テッズ、ロッカーズ、モッズと呼ばれる「族」です。平易に言うと「大人の言うことを聞かない不良集団」ですね。このうちロッカーズ生んだのがバイクカテゴリの一種である「カフェレーサー」。ロッカーズは、公道をぶっ飛ばすライダーで、当時悪の象徴であった革ジャンを着てバイクに乗り、キリスト教影響下であるイギリスにありながらロックンロール(「ロック」も「ロール」も性行為を表すスラング)を好み、カフェに集まってはレースもどきを繰り広げていました。ザ・不良。

このとき乗っていたバイクがハンドルを低くするなどスピードが出るようカスタムしたバイクであり、これがカフェレーサーと呼ばれるカスタムスタイルとなります。

モッズと比較し数の面でもその前衛性の面でもイギリス文化に対する影響力は小さかったようですが、この少数派であった「族」の中で生まれたカテゴリが脈々と受け継がれ、今や世界各国で「カフェ」という名前がつくバイクが走っている。そこに時代を超え、国を超え魅力を感じる人達が確かにいるという自信と魅力を感じます。

少々脱線するとジェットエンジン実用化前のレシプロエンジン戦闘機もめちゃくちゃ魅力的です。これは国や設計者の思想、目指すところが明確に素人にもわかる形で設計に現れていると感じられるからです。技術的に今より未熟であったからなのか科学的な正解へ収束して同一化するのではなく、各々取捨選択をした結果だろうと思っています。知らんけど
W800 Cafeについてもそうで、排ガス規制騒音規制対応に適している液冷エンジンが一般化し、W800に搭載されたエンジンよりも遥かに高回転なエンジンが普及している点に気づかれるともはや話の土台が崩れますが、、
エンジンを冷やすためのフィン、最高速度を上げるべくライダーへの空気抵抗を減らすための低いハンドル、法で定められた最低限の電子装備(ちょっと+αはあるけどね)。バイクがエンジンを可動させ速く走るという目的達成のためだけのデザインであると感じられることが、W800 Cafeカフェの美しさです。

ロマンの歴史(キャブトンマフラー)

次にキャブトンマフラーです。
これは、大阪中川商店で販売されていたバイクであるCabton号(Come And Buy To Osaka Nakagawaの頭文字)が由来です。

「キャブトン号」は特定の一車種の名称ではなく、キャブトンRTF型やキャブトンRTS型など様々あり、1952年頃の「キャブトン号」はメグロや陸王よりも高い値段設定で「日本一高価な素晴らしい車!」というキャッチコピーで販売されており、イギリス風の堂々たる重厚感ある大排気量バイクといったイメージだったようです。製造していたのは「みづほ自動車製作所」で、現在も愛知県犬山市で「新みづほ工業株式会社」が継承会社として操業しているようですが、販売網を全国へ拡大している最中突如として1956年に会社更生法が申請されており、一流大型バイクメーカーでありながら1958年にバイク製造の歴史に幕を閉じています。

「キャブトン号」を取り巻く歴史を体系的にまとめた文献が見つからず、詳しいことは分かりませんが、堂々たるイギリス風大排気量バイクを手掛ける一流バイクメーカーだったことは間違いないようです。「キャブトン号」は競争に敗れ表舞台から去ったものの「キャブトン」の名前はライバルである「メグロ」の流れを組むカワサキに残りました。

キャブトンの名が再登場したのはパーツメーカーが1970年代後半にカワサキ650W1S用の社外品マフラーを販売するにあたり、W1Sマフラーなどと表記するのは商法登録上問題があるため、歴史に埋もれた「キャブトン」の名を冠したとか

イギリスの歴史あるカフェレーサーというスタイルのバイクに、日本の、それも淘汰・吸収され一社たりとも現存しない戦前バイクメーカーの一社である「みづほ自動車製作所」由来の名称が残っている。イギリス模倣で始まった日本のバイク産業が、たしかに日本の中で生きたその軌跡を感じられるようです。

次回は乗り換え前に乗っていたRebel250との比較を書いてみようと思っています。この記事が全く誰にも閲覧されなければやめるかもです。

参考文献
小関 隆『イギリス1960年代:ビートルズからサッチャーへ』中央公論新社, 2021.
安部 悦生(明治大学経営学部教授).「経済の発展・衰退・再生に関する研究会(イギリス)」報告書, 2001. (online), https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk051/zk051a.htm
富塚 清『日本オートバイの歴史(新訂版)』三樹書房, 2001.
小関 和夫『メーカー別にたどる「国産オートバイの光芒」時代を創ったモデル達』三樹書房, 2013.

4 COMMENTS

匿名

著名な方の記事のようですが、せっかくの記事も冒頭でがっかりしました。
こんな方でも納車の意味を理解していないのですね>.<
納車したのは業者であって、著者は納車されたんです。
公に晒す記事ならばもう少し勉強して欲しいと思いますね。
これでは某知恵袋と同じレベルですね。

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Korin

確かに!業者が主体となって納品するので「されました」ですね!
最近度々「納車しました」というユーザーの発信が多く感覚が麻痺していました。
ありがとうございます😀
度々誤用される背景には「私が自分に車を納めました」という自ら成し遂げたという自負感といいますか、主体性を強調する、したい、という思いがあるのかもしれませんね。

変化する言葉の意味は理解しつつ正しい言葉を使わねば余計なところで損してしまうので気をつけます👍

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